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2月7日
6時半に僕は家を出発した。
忘れものが得意な僕はそれがないか何度か確かめた。
ギターとパソコンをもってきた。
ギターは軽いケースをみつけたので大分ラクだが、
パソコンは、IBM初代アイシリーズ。
私の知る限り、最も大きくて重い、ノートパソコンである。
着替えなど、他の荷物を少なくしてきたから大丈夫かと思っていたが
リュックに背負って、いざ歩いてみて、
バスの停留所に着く頃には
既に持ってきたことを後悔していた。
重すぎる。
旅にもっていくものではない。
時分の相変わらずの無計画さと、いきあたりばったりの生き方に
うんざりしながら、拷問を受けている人のように
重いパソコンに顔を歪めながら、バスに揺られた。
僕の旅はいつも、何かが一気に出発の日に襲ってくる。
手始めは、電車の人身事故だった。
普段は100キロぐらいでぶっとばしてくれる京王線の急行電車が
時速30キロぐらいしか出してくれない。
調布から新宿までそんな調子だった。
新宿に着いた時に30分遅れたというアナウンスを聞いた。
出発が6時半。
成田集合が10時55分。
4時間ちょっとあれば、
家から成田ぐらいわけないだろうとタカをくくっていたが、
千葉から成田が意外に遠いのには参った。
集合時間の10時55分になっても、
電車の窓に流れる景色は、のどかな住宅街であり、
近くに空港があるようにはとても見えなかった。
11時ごろ成田に到着した。
成田は成田空港の後にあるものだと思っていた私は
成田から更に電車に行かなくてはならないことを知って、
二度驚いた。
アナウンスによると11時30分に、成田空港行きの電車が出るとかなんとか。
とても間に合わない。
僕はそのまま全速力で階段を駆け上がり、
改札を出て、タクシー乗り場に向かった。
おばさんが運転手さんだった。
「成田空港第一ターミナルまで。
急いで下さい。」
荒い息をは裏腹に、イヤに落ち着いていた。
いや、落ち着いているように努めようと言った方がいい。
「何時出発?」
「12時30ぐらいなんですけど…」
時計を見ると11時15分。
おばさんは顔をしかめた。
「ギリギリだね。1時間切るとやばいね。」
おばさんは猛烈に飛ばしてくれた。
次々に車を追い抜いて行く。
僕はただ、車が1mmでも先へ速く進むように、
祈っていた。
信号がことごく赤だった。
なぜ、だろう。
なぜ、世界はいつも僕がしたいと思うことをこうやって…
そんな考えに捕われそうになって、そのことに気がついて、呪うのをやめた。
大丈夫、必ずうまくいく。
きっと、なんとかなる。
第1ターミナルが見えてきた。
「おばさん、お金おいとくね。おつりはいらないから。」
5000円札を差し出した。
メーターは3000円ちょっと。
「そんなにかからないよ。」
「おばさん、飛ばしてくれたから。」
タクシーの運転手が速度違反で掴まれば
おまんま食い上げである。
なのにおばさんは、必至で間に合わせようとしてくれた。
着いた!
「有難う!おばさん!」
「気をつけて!ありがとうね!」
空港を走った。
11番、11番。
添乗員らしき人が集合かけているのかなと思ったが見当たらない。
チケットを予約した、あるきかたドットコムからのメールを空港の人に見せると
「ああ、あるきかたドットコムの人ですね。こちらへ。」
いきなり、カウンターに通された。
チケットを受け取った。
間に合った。
「あと何分遅れたらダメだったですか?」
「1時間前だから、11時55分だね。」
時計を見ると、11時30分だった。
余裕といえば余裕だったか。
しかし、電車にあのまま乗っていたら、
確実に間に合わなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
飛行機は離陸の準備を始めていた。
なんであれ、間に合ったのだ。
実は、チケットを受け取ってから、また、飛行機に乗るまでに
乗り遅れそうになった。
空港に迷った上、両替に手間取って、
更には持ち物検査で、どうしても金属反応があったりして、
更に税関に並ぶ時間を甘く見ていた為、
出発の時間になっても、並んでいるままだった。
やばいなぁと思っていたら
飛行機会社の人が
「ozさん、いらっしゃいますか。」
と呼びにきた。
「ここです!」
「もう時間過ぎてますので、お早く!」
「すいません。」
とはいっても、税関を飛ばす訳にはいかない。
パスポートチェックを澄ませ、
また、全速力だった。
そのまま飛行機に飛び乗って、飛行機は待ちわびたように
滑走路を走り出すのだった。
僕は、なんであれ、乗れた。
乗れたら、こっちのものだと思っていた。
飛行機は滑走位置へ辿り着き、エンジンが一旦、静かになった。
そして、一気にパワーをあげて、
ブレーキを解除し、走り出した。
体全体が椅子に押し付けられる。
胸の高まりと共に、機体は空へと、浮き上がった。
そして、飛行機は飛び立った。
私とギターとパソコンを載せて。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
飛行機の出発が日本時間の12時55分。
ロンドンを経由して、アイルランドへ辿り着く。
ロンドン着は、16時頃。
成田を飛び立った飛行機は
ロシアのシベリア、北極圏すれすれを通り、
ストックホルムを超えて、
地球の自転よりも少し速いスピードで
ロンドンへ向かう。
この時期、北極の一部はずっとよるになる。
その代わりに、南極の一部はずっと昼になる。
その境界線ギリギリは、ずっと夕方のような空になる。
僕を乗せた飛行機がとったコースは、
このギリギリの、ずっと夕方コースだった。

空は綺麗だった。
地球ってかっこいい。
全てが愛しかった。
国際線の飛行機に乗る、高度1万メートルの大気圏に来ると
しばしば、全てが愛しくなる。
全てが許せる。
間違いなど何もないと思える。
勇気と希望で胸が溢れる。
きっと、人が死ぬと、こういう気分になるのではないかと思う。
少なくとも1年に1回は、私はこの大気圏の気分を味わっていたいと思う。
トイレに行こうとして、
際の窓を見たら、物凄いものが見えた。
ジェットから噴出された熱い空気が
飛行機雲になって、まさにジェットのように
流れている映像である。

僕はエネルギーに憧れる。
ジェットや、雷や、台風。
これらを見て、感じると、全身が震える。
地球の公転と一緒の方向に動くので
12時間、ずっと太陽は出たままだった。
日本時間の24時になっても、外は明るく、
興奮もあって、眠いが眠れない。
心地よいウトウトした感覚を楽しんでいた。
よくトイレに行き、その度に窓にへばりついた。
窓ガラスが凍っている。

外は極寒の世界。

そして、ここから見る世界はなんて、美しいのだろう。
空も、海も、雲も、大地も。

こんな美しい世界に、僕は住んでいたのか。
僕はこの星が好きだ。
この星をもっと知りたい。
そしてよくしたい。
その為に、この命を使いたい。
涙が出た。
怖がる必要なんて、ないんだ。
こんなに愛されている。
生きているというだけで、
この星の上に生きているというだけで、
なんて、なんて、素晴らしい。
なんて、なんて、愛しい。
僕は今、呼びかける。
光は突然に現れる。
過去に生きた不安な自分の前に。
明日を生きる眠れる自分の前に。
光を解き放て。
そして容赦なく光り輝け。
この世界に光を打て。
自分のもっている全てを使って。
永遠なるこの今に。

6時半に僕は家を出発した。
忘れものが得意な僕はそれがないか何度か確かめた。
ギターとパソコンをもってきた。
ギターは軽いケースをみつけたので大分ラクだが、
パソコンは、IBM初代アイシリーズ。
私の知る限り、最も大きくて重い、ノートパソコンである。
着替えなど、他の荷物を少なくしてきたから大丈夫かと思っていたが
リュックに背負って、いざ歩いてみて、
バスの停留所に着く頃には
既に持ってきたことを後悔していた。
重すぎる。
旅にもっていくものではない。
時分の相変わらずの無計画さと、いきあたりばったりの生き方に
うんざりしながら、拷問を受けている人のように
重いパソコンに顔を歪めながら、バスに揺られた。
僕の旅はいつも、何かが一気に出発の日に襲ってくる。
手始めは、電車の人身事故だった。
普段は100キロぐらいでぶっとばしてくれる京王線の急行電車が
時速30キロぐらいしか出してくれない。
調布から新宿までそんな調子だった。
新宿に着いた時に30分遅れたというアナウンスを聞いた。
出発が6時半。
成田集合が10時55分。
4時間ちょっとあれば、
家から成田ぐらいわけないだろうとタカをくくっていたが、
千葉から成田が意外に遠いのには参った。
集合時間の10時55分になっても、
電車の窓に流れる景色は、のどかな住宅街であり、
近くに空港があるようにはとても見えなかった。
11時ごろ成田に到着した。
成田は成田空港の後にあるものだと思っていた私は
成田から更に電車に行かなくてはならないことを知って、
二度驚いた。
アナウンスによると11時30分に、成田空港行きの電車が出るとかなんとか。
とても間に合わない。
僕はそのまま全速力で階段を駆け上がり、
改札を出て、タクシー乗り場に向かった。
おばさんが運転手さんだった。
「成田空港第一ターミナルまで。
急いで下さい。」
荒い息をは裏腹に、イヤに落ち着いていた。
いや、落ち着いているように努めようと言った方がいい。
「何時出発?」
「12時30ぐらいなんですけど…」
時計を見ると11時15分。
おばさんは顔をしかめた。
「ギリギリだね。1時間切るとやばいね。」
おばさんは猛烈に飛ばしてくれた。
次々に車を追い抜いて行く。
僕はただ、車が1mmでも先へ速く進むように、
祈っていた。
信号がことごく赤だった。
なぜ、だろう。
なぜ、世界はいつも僕がしたいと思うことをこうやって…
そんな考えに捕われそうになって、そのことに気がついて、呪うのをやめた。
大丈夫、必ずうまくいく。
きっと、なんとかなる。
第1ターミナルが見えてきた。
「おばさん、お金おいとくね。おつりはいらないから。」
5000円札を差し出した。
メーターは3000円ちょっと。
「そんなにかからないよ。」
「おばさん、飛ばしてくれたから。」
タクシーの運転手が速度違反で掴まれば
おまんま食い上げである。
なのにおばさんは、必至で間に合わせようとしてくれた。
着いた!
「有難う!おばさん!」
「気をつけて!ありがとうね!」
空港を走った。
11番、11番。
添乗員らしき人が集合かけているのかなと思ったが見当たらない。
チケットを予約した、あるきかたドットコムからのメールを空港の人に見せると
「ああ、あるきかたドットコムの人ですね。こちらへ。」
いきなり、カウンターに通された。
チケットを受け取った。
間に合った。
「あと何分遅れたらダメだったですか?」
「1時間前だから、11時55分だね。」
時計を見ると、11時30分だった。
余裕といえば余裕だったか。
しかし、電車にあのまま乗っていたら、
確実に間に合わなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
飛行機は離陸の準備を始めていた。
なんであれ、間に合ったのだ。
実は、チケットを受け取ってから、また、飛行機に乗るまでに
乗り遅れそうになった。
空港に迷った上、両替に手間取って、
更には持ち物検査で、どうしても金属反応があったりして、
更に税関に並ぶ時間を甘く見ていた為、
出発の時間になっても、並んでいるままだった。
やばいなぁと思っていたら
飛行機会社の人が
「ozさん、いらっしゃいますか。」
と呼びにきた。
「ここです!」
「もう時間過ぎてますので、お早く!」
「すいません。」
とはいっても、税関を飛ばす訳にはいかない。
パスポートチェックを澄ませ、
また、全速力だった。
そのまま飛行機に飛び乗って、飛行機は待ちわびたように
滑走路を走り出すのだった。
僕は、なんであれ、乗れた。
乗れたら、こっちのものだと思っていた。
飛行機は滑走位置へ辿り着き、エンジンが一旦、静かになった。
そして、一気にパワーをあげて、
ブレーキを解除し、走り出した。
体全体が椅子に押し付けられる。
胸の高まりと共に、機体は空へと、浮き上がった。
そして、飛行機は飛び立った。
私とギターとパソコンを載せて。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
飛行機の出発が日本時間の12時55分。
ロンドンを経由して、アイルランドへ辿り着く。
ロンドン着は、16時頃。
成田を飛び立った飛行機は
ロシアのシベリア、北極圏すれすれを通り、
ストックホルムを超えて、
地球の自転よりも少し速いスピードで
ロンドンへ向かう。
この時期、北極の一部はずっとよるになる。
その代わりに、南極の一部はずっと昼になる。
その境界線ギリギリは、ずっと夕方のような空になる。
僕を乗せた飛行機がとったコースは、
このギリギリの、ずっと夕方コースだった。

空は綺麗だった。
地球ってかっこいい。
全てが愛しかった。
国際線の飛行機に乗る、高度1万メートルの大気圏に来ると
しばしば、全てが愛しくなる。
全てが許せる。
間違いなど何もないと思える。
勇気と希望で胸が溢れる。
きっと、人が死ぬと、こういう気分になるのではないかと思う。
少なくとも1年に1回は、私はこの大気圏の気分を味わっていたいと思う。
トイレに行こうとして、
際の窓を見たら、物凄いものが見えた。
ジェットから噴出された熱い空気が
飛行機雲になって、まさにジェットのように
流れている映像である。

僕はエネルギーに憧れる。
ジェットや、雷や、台風。
これらを見て、感じると、全身が震える。
地球の公転と一緒の方向に動くので
12時間、ずっと太陽は出たままだった。
日本時間の24時になっても、外は明るく、
興奮もあって、眠いが眠れない。
心地よいウトウトした感覚を楽しんでいた。
よくトイレに行き、その度に窓にへばりついた。
窓ガラスが凍っている。

外は極寒の世界。

そして、ここから見る世界はなんて、美しいのだろう。
空も、海も、雲も、大地も。

こんな美しい世界に、僕は住んでいたのか。
僕はこの星が好きだ。
この星をもっと知りたい。
そしてよくしたい。
その為に、この命を使いたい。
涙が出た。
怖がる必要なんて、ないんだ。
こんなに愛されている。
生きているというだけで、
この星の上に生きているというだけで、
なんて、なんて、素晴らしい。
なんて、なんて、愛しい。
僕は今、呼びかける。
光は突然に現れる。
過去に生きた不安な自分の前に。
明日を生きる眠れる自分の前に。
光を解き放て。
そして容赦なく光り輝け。
この世界に光を打て。
自分のもっている全てを使って。
永遠なるこの今に。

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