機能不全な家族のパターン

 
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●家族から受ける影響●

 心が柔軟で影響を受けやすい子供時代に、自分の育った家族のなかで長い時間をかけて習得した行動、態度、思考、感情、人間関係のつくり方は、大人になっても自分の基礎として残っており、自分の性格の一部となり、無意識のうちに日常の行動となって出てきやすいものです。

 人間は、生まれつきの素質や気質と、育った環境や人間関係と、自分の意志や選択が、3つの大きな要素としてからみ合い、性格を作り上げると考えられます。

 ここでは、過去に起こった出来事が、どのように自分の行動に影響を与え、現在の問題の引き金となっているのかについて考えて行きましょう。


●機能不全な家族のパターン●

 機能不全な家族にはさまざまなパターンがあります。そのなかで、人がどのような影響を受けてしまうのか、それぞれの場合について見て行きましょう。

 

▽愛のないつめたい家族


 愛のないつめたい家族の中で育つと、自分もどのように他人や子供に愛を与えればいいのか分かりません。

 むやみやたらと表面的に愛情をくれそうな人にしがみついたりまた反対に、誰とも人間関係が持てなくなったりします。

 親が病気がち、いつもうつに落ち込んでいた、自殺や家でがあったなどの経験をしている人は、どこかに孤独感があり、さびしさがぬぐいきれない場合もあります。

 見捨てられる不安にかられて、パニックに陥ったり、人を頼れないことも少なくありません。

 何を言っても相手にされず、聞いてもらえなかったりすれば、人は、世の中は何を言ってもムダであると思いこんだり、自分をも否定してしまうことになりかねません。


▽子供を肯定しない家族

 他人や兄弟姉妹といつも比べられたり、差別されたり、悪いことは全部自分のせいにされたりして育つと、すぐ自分は他人より劣っていると思ったり、間違っていると思いこんだりします。

 または、他人が自分が悪いと思っているのではないかと疑ったり、その思いこみから怒りを相手に爆発させたりすることも、ままあります。

 猜疑心から、ほんのちょっとのことを大きく感じ、防衛的になったり攻撃したりしてしまいます。

 なにかと抑圧され、批判され、嫌みや皮肉を言われ、罪の意識をうえつけられたり、コントロールされて育つと、自己(セルフ)というものが成長しません。

 自分そのままであってはいけないというメッセージを受け取ってしまうのです。

 親の言うとおりにして、いい子にしていないと、批判され拒絶されるという恐れは、大人になってもなかなか消えるものではありません。

 ときには、自分自身が、自分に対する一番過酷な批評家になってしまうこともあります。

 特に「こんなにしてやっているのに」とか「あなたのためだ」と親に言われて罪の意識を植えつけられて育つと、親がよかれと思ってやってやっているため、親にはっきりイヤだと言うわけにもいかず、つい自分の本音を殺して親のいいなりになったりしてしまうのです。

 親に反抗すれば、「わがままだ」「自分一人がよければ良いと思って!」と、ますますコントロールが強まったりします。

 こうして大人になった人は、にせの仮面をかぶった自分と、本当の自分との葛藤で行きづらさを感じてしまいます。

 まだ生きづらさを感じている人は救いもありますが、親の言うとおりに生きてしまって、疑うことなくロボットのように成った人は、自分の人生よりも親の人生のために生きる操り人形と化してしまいます。

 こういう人は弱々しく、なんでも親の言うことに「ハイ」と言って従い、親にされたことと同じ事を自分の子供に要求して、子供の個性をつぶしてしまったりするのですが、一見とてもできた人に見えるだけに、むしろ怖いのです。


▽親の期待が大きすぎる家族

 親の期待が大きすぎたり、親の見栄、親のお人形として育てられた人も、本当の自分と期待される人物像のギャップに苦しみます。

 能力以上のことを要求されたり、自分の個性とは全く違うことを期待されると、どうでも良いと自暴自棄になったり、自信をなくしたり、または完璧を求めて強迫的になったりすることがあります。


▽表面だけ良く振る舞う家族

 他人の目を気にする、表面だけ良く振る舞う家族も、裏と表が違う人間を作り上げることがあります。

 肩書きや地位、お金やブランドや商品、有名校だけが重視されて、人間の中身はどうでもよくなってしまいます。

 名の通った学校への入学、大手の会社への入社が成功であるというたった一本のものさしではかられる人生は、人間の幅を縮め、選択肢の少ない、面白くもない人生を生み出します。

 他人の気持ちを思いやれる心の豊かな人間、一人一人の人格と真の幸福を尊重する人間とはほど遠い、人に上下をつけて、軽蔑するような人間になりがちです。


▽秘密や隠し事のある家族

 あまりにも秘密があったり、隠し事があったりする家族で育つと、自分は他の人とは違うと感じるようになったり、恥の意識が強く、自分を主張できなくなったりします。

 つかなくでもよいウソをついて他人をかばったり、自分も隠し事が多くなったりすることがあります。

 自由にふるまったり、自由に感情や意見を出したりするのが難しくなったりもします。

 とくに性的虐待などがあった家族では、よく「誰にも言うな」と固く口どめされ、脅されて育つので、大人になっても人と気楽な友人間嘉永が持てず孤立してしまったりします。


▽容姿やからだについて否定的なことを言う家族

 顔や姿についてからかわれたり、見下されたりして育つと、もちろん恥の気持ちが強くなったり、自分の顔や体に自信が持てなくなります。

 ムリにダイエットして摂食障害になったり、整形手術を何度もしてみたりなど、表面的な美しさのみにとらわれてしまったりすることもときにはあります。

 また、その反対に顔や体のことなど少しもケアをしなくなる場合もあります。男女交際なども劣等感から、うまくできなくなる場合もあります。

 治すことができない身体障害があった場合などは、からかわれたり卑下されると、とくに強く心が傷つき、自己嫌悪に陥ったり、他人の前に出られなくなったりします。

 また、性的なからだの成長のことに無神経に言及されるのもつらく、自分の性を恥じたり、なるべく外に自分の性的発達を見せないようにと異常に気を使うようになったりします。


▽親と子供の関係が逆転している家族

 子供が大人の役を果たすような家族で育つと、子供時代の無邪気さを経験することができません。

 親のけんかの仲裁に入ったり、親のグチを聞かされたり、問題の相談役になったり、親の気分を直してやろうとなぐさめたり、自分の歳に似合わないほどの家事をしたり、親の世話をしたりして育てば、大人になっても他人の世話ばかりする共依存者になってしまうのも不思議ではありません。

 常に気をきかして、親のご機嫌をとって肩をもんでやったり、お茶をくんでやったりすると、親からはほめられるので、それがたったひとつのアイデンティティーになってしまうのかもしれません。

 別に、親のために助けると言うことが悪いわけではないのですが、ただ必要以上に自分の欲求を認めず、犠牲になって他人に仕えすぎると、大人になっても問題のある人に惹かれて、その人の世話だけで人生が終わるというようなことになりかねません。

 親から自分と競争されたり、嫉妬されたりすれば、親に勝つはずはないので、絶望感にとらわれたり、裏で親を軽蔑したり、弱い者いじめに走ったりすることもあります。


▽子供を過度に甘やかす家族

 子供を過度に甘やかす家族で育てば、自分を適度に規制する力がつかなかったりします。自分の欲しいものがすぐ手に入らないと怒りを爆発させたりする、相手の気持ちをまったく考えないナルシスティックな人間になるかもしれません。

 親が何から何までやってしまい、日常の基本的な自分の世話すらできなくなってしまっている人も多いのです。

 あまりにも過保護に育っており、世の中に出て挫折を経験するとガタガタとくずれてしまうなど、精神力が弱い場合もあります。

 親が自分のひとりよがりやさびしさなどの精神的欲求から子供を溺愛して離さなかった場合は、大人になっても一人立ちできなかったり、親の意見を聞かないと自信が持てなかったり、マザコンになったりなど、親の手足の一部となって分化できないことがあります。


▽子供を否定する家族

 自分を否定されて育った人は、自分自身を受け入れるのが難しくなります。

 「おまえなんか産むんじゃなかった」などといつも言われていれば、生きていること自体に罪の意識を持ってしまって、自殺願望も生まれてきます。

 また、「男の子だったらよかったのに」と自分の性を否定されるのも、自分が女性であることへの嫌悪感や劣等感をうえつけます。

 自分は自分であってはいけないというメッセージを受け取ることは、とてもつらいことです。人生すべてのことに暗い悲観的な視点を持って接するようになる可能性もあります。

 また、他人から認められたいという気持ちが異常に強くなる場合もあります。


▽依存症のメンバーがいた家族

 家族の中に依存症や共依存症の人がいた場合、大きな影響を与えます。

 特に、親がアルコール依存症や薬物依存などにのめりこんでいた家族では、身体的、精神的アビューズ(虐待)が、ひんぱんに起こる可能性があります。

 親が酔うと暴れるなど、何がいつ起こるかわからないような家族で育てば、びくびくしたり、または自分の感情が鈍麻して、からだから出るメッセージに気がつかなくなったりします。また、ものごとを最初から最後まで落ちついて完成させることができないくせがついたり、衝動的に反応したり、怒鳴り声や物音に異常に萎縮してしまったりします。

 いつもイライラして、怒りが爆発するようになったり、バランスがとれなくてものごとに一貫性が無く、気分が落ち込んだりして感情の上下が激しくなったり、自分も各種の依存症にとらわれてしまうようなことになるといったことがあります。

 このような家族で育つと、共依存症になる人も少なくありません

(共依存のチェックリストを参照して下さい)。


▽暴力のあった家族

 非常によく見られるのは、父親から母親への身体的・精神的な虐待や、両親のけんかを見て育った場合です。

 最近の研究では、父親によって母親が虐待されるのを見て育った子供が示す障害が、今まで考えられていたより大きいことが分かってきました。

 例えば、うつ病、攻撃的な行動や非行、友達からいじめられたりつまはじきにされる、アルコールや薬物依存、学業成績不振、不安症になる率が普通の子供に比べて非常に高いことなどがわかりました。

 ある統計によりますと、境界性人格障害(ボーダーライン・パーソナリティー)の60%異常が子供のとき父親の母親虐待を目撃した者であったという数字が出ています。

 あんなにいやだったのに、大人になって自分も妻を虐待する側になったり、または虐待する夫やボーイフレンドといっしょになったりします。

 虐待する父と、自分や子供の身を守ろうとしない母に対する怒りは非常に大きなもので、大人になっても、親への軽蔑や怒りが消えなかったりします。

 また、上手く関係が作れず、緊張した夫婦関係を築く場合もあります。

 祖父母と両親、親類などとのいさかいも、同じように子供に非常に不安を与え、大人になっても、少しでも対立があると、パニックになったり逃げたりして、うまく処理ができなくなってしまうことも少なくありません。


▽子供への虐待のあった家族

 幼少の頃、自分自身が虐待を受けていたような場合、その傷はより深く、影響もより強いものになります。

 小さな子供が身体的に虐待を受けた場合、攻撃する力もなく、逃げることも許されず、恐怖におののきながら虐待を受けるしか道がありません。

 気を失うような感じがしたり、息が吸えなかったり、息切れがしたり、からだがふるえたり、嘔吐しそうになったり、冷や汗が出たり、胸がドキドキしたり、しめつけられるような気がするなど、パニック状態を経験することもあるでしょう。

 そうした状態の中では、いつもびくびくしてしまい、気楽に生活することなどとてもできないため、大人になっても人生を楽しむことができません。顔やからだにハリがなくなって無表情な人間になってしまうという症状もよく見られます。

 また、アビューズされることが普通であったので、何が正常なのか、異常なのか、わからなくなってしまいます。

 性的な虐待があった場合や、異常な怒りが爆発していたり、人格を否定するような言葉やおどしなど、ひどい精神的な虐待があった場合も、同じような状態になります。

 特に性的な虐待を受けて育った場合、極端にセックスを嫌って大人になっても性的な関係が上手くいかなかったり、または反対に、誰かれかまわずセックスしたり売春に走ったりと、不安定な性生活をすることも少なくありません。

 自分の体についての嫌悪感、信頼していた人に裏切られた怒り、自尊心の低下、男性不信、ひきこもりや、さまざまな精神障害が併発することがあります。

 こうした人たちの中には、大人になっても、PTSD(心的外傷後ストレス症候群)の症状を示す人が少なくありません。

 トラウマの出来事が、まるで今起こっているかのように感じられるフラッシュバックがよく起こります。トラウマが起こったときと同じような状況にあうと、身も心も反射的にパニックを引き起こしてしまい、トラウマに似ていたり関係がありそうだと思われる場所や人を避けようとします。

 PTSD、解離(自分が自分から離れてしまって自分ではないかのように感じる)、境界性人格障害(感情の上下が激しく、人間関係が不安定になる)などの障害が起こる場合があります。

 もちろん、虐待を受けた全ての人がなるというわけではなく、先天的な要素、虐待のひどさ、期間、虐待を与えた人との人間関係(信頼する身近な人から受けた場合はよりひどい障害となりやすい)、まわりに助けてくれたり理解してくれる人がいたかどうかなどで、相当違って来ます。

 虐待を受けた多くのアダルトチルドレンは、自分のせいだ、自分が悪かったからだ、自分はダメだ、自分は傷物だ、自分なんか生きている資格がないなどと思いこんでいることが少なくありません。

 自己評価が低く、自暴自棄になったり、暴力をふるうなど、他人を傷つけたりして不安定で、みじめな生活をしている人や、または、その反対になんの感情もなくなって、ただひたすら仕事や子供に打ち込み他の人から離れたり、他人を軽蔑したり、自分も成長して虐待する親になる場合もあります。


(参考資料)
『アダルト・チルドレンと癒し』(西尾和美)

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