小笠原父島旅行記 1日目 小笠原丸

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7月31日

 8:00に目が覚めた。
 昨日から、小笠原に行こうとは思っていたものの
 船の予約手続きは土日はできないことを知り、
 あきらめかけていた。


 しかし、なにかの力が働いていた。
 僕の都合などおかまいなしに
 当日になってもチケットすらとれておらず
 港まで行っても、船に乗れるかわからない状態。

 仮に乗れたとしても、宿の予約など一切ない。
 もしかしたら、どこも満室で野宿かもしれない。

 シーズンとしても、それでも全くおかしくない時期だ。

 それが逆に自分らしいとも思った。

 5分の間に
 リュックに洋服をつめて
 パソコンをかばんにいれて、8:15には家を出ていた。

 船の出発は10:00。
 これをのがすと、3日後まで船は出ない。

 小笠原の父島。
 そこへは飛行機は飛んでいなかった。

 それが逆によかった。
 船に乗りたかった。

 吉祥寺から中央線に乗る。
 月曜日だから通勤ラッシュの人たちと一緒に電車に揺られる。

 アフィリエイトというものの収入で生活するようになって
 1年半。

 通勤ラッシュというものからは、縁遠くなった。
 時々、その時間に電車に乗り合わせることもあるが
 大抵はその時間からづれて、電車に乗り、
 その時間よりも前に帰ってきてしまう。

 ときおり、通勤電車に乗ることが
 楽しくすらある。

 人が大勢いる。
 他人ではあるものの、同じ日本語を話す人たちが
 近くにいることの安心。

 それを、外国から行って帰ってくる度に感じていた。

 神田で乗り換え、浜松町へ。
 この駅は好きではない。

 田町とか、このへんはどうも味気ない。
 東京の東側が、あまり実は好きではない。

 まず緑が少ない。
 そして、IT系の企業が多い気がする。

 どうも灰色のイメージがある。
 高いビルと、たくさんの車。
 それらを前に呆然とする。

 案の上、道に迷う。

 もともと、道に迷いやすい脳構造なものだから
 時間ぎりぎりというのは、なにかある。

 タクシーに乗った。
 その方がよいと直感的に思った。

 「竹芝桟橋まで。」

 ワンメーターだった。
 660円。

 時間ぎりぎりだったので

 「おつりはいらないです。」

 と断り、1000円渡した。

 乗船券売り場でチケットを買う。
 どうやら2等船室は大丈夫らしい。

 26200円を支払う。

 そして、すぐに船へ。
 入り口で整理券をもらい、とりあえずは船室へ。

 おがさわら丸、2等船室は雑魚寝である。
 大きな部屋の床の上に毛布が敷かれており、
 それにくるまって寝る。

 とりあえず、荷物をおき、貴重品とノートパソコンをもって
 ロビーのようなところにいった。

 そして、ノートパソコンを広げて、
 大急ぎでその日1日のメルマガ5通を10分ぐらいで書いた。

 すでにある文章をつけたり貼ったり。
 編集後記や出だしはもう少し考えたかったが、
 なにせ時間がない。

 エアーエッジのプロを使っているので通信速度は良好。
 しかし、港を離れれば、船にPHSの電波がきていなければ
 まず、つながるまい。

 船員さんに聞いてみた。

「インターネットって、船でできますか。」

「まぁ、まず船上では電波着ませんよねぇ。」

 宇宙の真実であるかのように言われた。
 今は飛行機の上でもネットぐらいできるようになっておるというのに。

 反論しても意味がないのでしなかった。

 メルマガを書いて、送信。
 4通目を送った後ぐらいに、船は動き出した。

 やばいと思って、あと1通を大慌てで書いた。

 幸い、船が陸の近くを通ってくれたので
 思いのほか、ネットは長い間できた。

 メルマガを送った後も、メールの受信やMIXIなどをした。

 色んな人からメールが来ていた。

 とりあえず、画面を閉じて、甲板へ。
 目の前に横浜ベイブリッジが見えた。

 結構、スピードが速い。
 おそらく、今まで乗った船の中では一番早い気がする。

 そもそも、船というものにそれほどたくさん乗ってきたわけではない。
 大体、飛行機か、車か、電車。

 船は遅いし、チケットが高い。
 よほどのことがない限りは乗るものではない。

 海の匂いのする風。
 心地よい。

 この感覚が欲しかった。

 海を感じたかった。
 なぜか、海にいくと洗われる気がする。

 生きているだけで絡め取っ手しまう、邪気のようなもの。
 こびりつく、苔のようなもの。

 それを、海と太陽が洗いとってくれる気がする。


 その後、しばらく船室には戻らず
 ずっと甲板にいた。

 まるで、亀が甲羅干しでもするように、
 甲板で海の風を浴びていた。


 その後、デッキのテーブルがあるところで
 ノートパソコンを開いて、メールの返信や、
 届いた自分の新商材の最終校正をしていた。

 iポッドにいれた矢井田瞳の曲や
 アイルランドで録音したセッションの音源、
 山崎まさよし、平原綾香。

 とっておきの宝物を聞きながら、
 海の匂いをかぎながら、
 仕事をする。

 なんとも贅沢な時間だと思った。

 仕事半ばで、急激に眠気に襲われた。
 あまり寝ていないのと、たまりたまった疲れ、
 そして、乗れたという安堵感。

 それらが一気に眠気となっておしよせた。

 ノートパソコンをとじ、レストランで昼食をすませ
 船室にもどり、泥のように寝た。

 仕事はスムースではなかった。
 メルマガは相変わらず、やっていて自分も楽しく、
 成果もあがっていた。

 しかし、新商材については、なにかがひっかかっていた。
 もうほとんど万端のはずなのに、なにかが、ひっかかっていた。

 もうごり押しでなんとか発売してしまおうと思っていたが、
 息切れした。

 体調もおかしくなってきていたので
 このままではまずいと思い、旅に出ることとした。

 僕は体調を壊すと旅に出る。
 普通は寝たり、病院にいったりするのだろうが、
 僕の場合、それをやると悪化する。

 旅。

 多分、僕という人間の構造そのものが
 旅用にできている気がする。

 魚は海の中でしか生きられないように、
 僕は旅の中で生きるのが自然なんだと思う。

 1ヶ月おきに、どこかしら
 思いつきで旅してる。

 旅にでると、力がみなぎり、直感がさえ、
 顔が自分らしくなってくる。

 眠りから覚め、甲板に出た。
 夕方だった。

 周りは水平線ばかり。
 陸はなかった。

 船は大きく揺れていた。
「うねりが多少ある」と
 アナウンスがあったが、
 時々、本当に倒れそうになるぐらい大きく揺れる。

 それが妙にわくわくした。

 エネルギーを感じた。
 太平洋のエネルギー。

 近くをみていると酔いそうだったので
 水平線や、やがて空ばかりみていた。

 船はひたすら、南へ向かう。

 夜。

 甲板に出てみると
 星はなく、暗闇が広がっていた。

 一切の明かりない暗闇。
 海の暗闇。

 恐ろしかった。

 こんなところにおいてけぼりにされようものなら
 二度とは帰ってこれまい。

 恐ろしすぎて、わくわくした。

 そのまま、うつらうつらとした気持ちのまま
 闇夜を見つめていた。

 やがて、内側が静かになっていった。

 ふと、何かが思い出せそうな気がした。
 「あれ?なんだっけ・・・。」

 しかし、やがて眠くなり、
 また眠気と戦いながらレストランで夕食を食べ、
 船室に戻り、寝たのであった。

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