8月5日
今日はダイビングショップに8時集合だった。
いつもよりも1時間速い。
朝食をすませ、
水着を着て、その上から普段着を着る。
泊まっているユースホステルから
歩いて1分のところにあるダイビングショップに向かう。
今日受けるのはボートスペシャリティダイブ。
いままでは浜からダイビングするのであったが
今日はボートからいきなり水深10メートル以上の海に入る。
もともと僕は深い海が怖い。
多分、水深恐怖症ではないかと思う。
子どものころからそうだった。
今までおぼれた体験はなかったのに
深い水を見ると出てこれなくなる、というような恐怖感をもっていた。
恐怖感、とともにわくわくする感覚があった。
まだ行ったことのない世界。
ずっと行ってみたかった世界。
そもそも、今までダイビングをしたことがない、ということ自体、
不思議でしょうがなかった。
子供のころから海が好きで好きでしょうがなかった。
千葉の館山にあるおじいちゃんの家に
夏休みに行く度に、
「早く海にいこうよう」とせがんでいた。
千葉の館山は房総半島のさきっぽで
更にその先に沖ノ島と呼ばれる小さな島がある。
自衛隊の基地が隣接しており、
時節、ヘリコプターなどが飛んでいる。
ここは、関東でも有数の綺麗な海で
生き物もたくさん見える。
去年の夏も、ここでキャンプをしたのは
良い思い出になっている。→F
ダイビングというものの存在を知ったのは
高校ぐらいで、でもすぐにやろうとは思わなかった。
はっきりいって、それどころではなかった。
色んなことがあり、
少しは落ち着いてきた、夏の終わりに
ふと体験ダイビングに申し込んでみた。
伊豆の大瀬崎でもぐった。
耳抜きはできなかったが、魚の群れに囲まれる始めての体験は衝撃的だった。
ただ、当時はお金もなく、職も不安定だったものだから、
それ以上先のコースに申し込もうとは思わなかった。
それから約5年がたつ。
僕はボートの上でダイビング機材を背負っていた。
5年越しの夢の実現。
どきどきしていた。
これはずっとしたかったことなのだと、
この時、気づいた。
バディの人は、12年ブランクがある人だった。
僕も初心者ということで、今まで教えてくれたインストラクターさんと
もう一人のインストラクターさんがつきっきりでついてくれた。
すごく安心したし、うれしかった。
お互いの機材をチェックし、ジャイアントなんとか、という
立ったままの姿勢で海に入る。
耳抜きをしながら、ゆっくりと海底に潜っていく。
海は今まで見たこともないぐらい、透き通っていた。
海というのは、こんなに遠くまで見られるものなのかと驚いた。
降り立った目の前に、かつて戦争で戦った沈船があった。
そして、沈船の周りには魚が群れをなして泳いでいる。
バディの人が沈むのに苦労していた。
インストラクターさんが誘導し、なんとか潜ってこれた。
4人で沈船の周りを、廻る。
ボイラー室、エンジン、歯車。
古い機構。
その周りに海草と貝がびっしりとくっついており、
魚たちのよい住処になっているようだった。
70年ほど昔から
ずっとここにあるらしい。
時が止まっていた。
水深は16メートル。
上を見上げると、水面ははるかに上であり、
今、いるここは海底だった。
当たり前のように、海の底で息をしている。
不思議なことだった。
見たことのない生き物がいて
見たことのない景色が広がっていた。
時間はあっという間にすぎていった。
海からあがり、
ボートでひとやすみ。
昼食をとり、
次のダイビングスポットに向かう。
二つ目のダイビングスポットで二本目のダイビング。
バディの人も慣れてきたようで
余裕のある心地よいダイビングとなった。
ダイビングをしている人の姿とは
本当に空を飛んでいるみたいだった。
2本目を終えて、船に戻る。
船は一路、港に向かう。
船は宿泊もできるクルーザーで
中型のようだった。
風はあったが、太陽は照りつけ、
船は風のように走った。
僕は船の先端に座った。
目の前にあるのは海と空。
その中を風を切りながら疾走する船の先端で
風を浴びながら、海を眺める。
最高だった。
最高の気分を味わいながら、
帰りの船の上で、今回の旅の目的は果たせたような気がし始めていた。
